先週末届いたステレオヘッドホン「MDR-D777SL」ですが、この2日間じっくりと音を聞いてきましたので、簡単ですがレビューをお届けします。
■パッケージや仕様ついて
パッケージは透明エンビ製。中身はヘッドホン本体と延長コード、キャリングポーチというシンプルな構成。パッケージの裏面に使い方が印刷されており、取説の類は一切入っていません。「SOUND WALK」のブランドロゴもさりげなく入ってますね。今後どういうヘッドホンにこのブランドが使われるのかよくわかりませんが、響きとしては悪くないっすよね。
ソニーのヘッドホンではお馴染みの折りたたみ式。後述するサウンド・イン・ダイアフラムのスイッチはソニーロゴの上に、左右両方別々にあります。
D777SLの売りはスタジオモニター用ヘッドホンの最高峰である「Z900HD」譲りの高音質設計をコンパクトにまとめ上げた点ですよね。ドライバーユニットのサイズ(10mmの差)と最大入力(Z900は2倍)以外はほぼ同スペック。Z600とはドライバーユニットのサイズこそ同じですが、再生周波数帯域には大きな差があります。その差は価格にも現れており、ソニスタではD777SLを一台買う金額でZ600が二台買えます。
MDR-D777SL
(19,800円・ソニスタ)
・感度 106dB/mW
・再生周波数帯域 8-80,000Hz
・インピーダンス 24Ω
・最大入力 1,500mW
・質量 約166g
MDR-Z900HD
(22,800円・ソニスタ)
・感度 107dB/mW
・再生周波数帯域 8-80,000Hz
・インピーダンス 24Ω
・最大入力 3,000mW
・質量 約300g
■音質について
コンセプトや価格帯から競合製品はBOSEの「TriPort」(右画像)になると思いますが、あいにく所有していませんので手持ちのZ600との比較してみました。画像はZ600との比較です。Z600と比べて大変コンパクトに仕上がってます。ハウジングはソニーロゴが入っている部分はヘアライン仕上げで高級な感じに見えるのですが、じっくり見ると大半はプラスチック製です。天然コラーゲン複合素材を使用したというイヤーパッドの装着感は自分の場合は良好でした。ただ、長時間の装着はさすがに蒸れてきますね。これから冬場は暖も取れて良いかもしれないけど、夏場はちょっとつらいかもって感じです。(画像のモデルは同居人っす)
音質については、Z900HD譲りということですごく期待していたのですが、初めて使ったときは正直「え、こんなもんなの?」という感じでかなり微妙な印象だったんです。がしかし、D777SLの音にある程度慣れた後にZ600で同じ音楽を聴いてみて色々とわかってきました。
音場感というか音の広がりはZ600のほうがあるように思えるのですが、定位がはっきりしているのはD777SL。全ての楽器がバランス良く鳴っている感じ。ロックやポップスではスネアのチューニング、ベースのピッキング、ギターやシンセ・キーボードのコード感がはっきりとわかるし、何よりボーカルが前に出てくるのが良いです。
なんのことはない、Z600もソニーマジック(ドンシャリ系のチューニング)が施されていたということがD777SLを使ってみてよくわかりました。Z600を使い始めた時はなんて音が良いんだと感動しましたけど、上には上があるというか、チューニングによってここまで音が変わるんだなあということがよーくわかりました。
Z600だと低音域の楽器の音が前に来てしまい、ボーカルが平坦、または引っ込んでいる感じがするが、D777SLには全くそれを感じません。Z600の場合は、ベースとバスドラのアタック音が増幅されてしまい耳障りに感じることが多いのでが、D777SLはアタック音が実に自然で、ベースも指弾きなのか、ピック弾きなのかもわかるぐらい。楽器をやる人がこの二つのヘッドホンで音楽を聴いてコピーしたら演奏方法どころか音作り(イコライジング)からして変わってしまうのではないかと思います。
サンプル音源としてジノ・バネリの「Brother To Brother」(画像右・リマスター版CDでむっちゃ音良いです!)のタイトル曲を嫌と言うほど聞き比べてみましたたが、その差は歴然でした。手数の多いドラム、スケール感ある手弾きベースとブリブリのシンセベース、声域の広いジノのボーカル、それら全てがとてもバランス良く聞こえます。ドラムにいたってはスネアのチューニングや大小のタムタムまではっきりと違いがわかります。ちなみに、ウォークマンS2(ATRAC 256kbps)とiPod 5G(AAC 128kbps)でも色々と聞き比べましたけど、圧縮率に関係なくZ600と比べるとはっきりと差が聞き取れました。
これからエージングでどのように音に変化が現れてくるかは予想できませんが、個人的にはEX90SL同様に購入後たいして使っていなくても十分満足のいく音質だと思いました。
■サウンド・イン・ダイアフラムの効果は
ワンプッシュで周囲の音が聴けるという「サウンド・イン・ダイアフラム」ですが、それほど劇的な効果があるわけではありませんでした。そもそも、このヘッドホンは密閉型といっても外の音を完全に遮断しているわけではありません。よほどの大音量でなければそこそこ周囲の音は聞こえています。「サウンド・イン・ダイアフラム」はそれをもうあと一段階ぐらい聞こえるようにしてくれるという感じでした。ヘッドホンの下側に小さな開口があるので、ここを物理的に開け閉めしているのかなあ。原理というか詳細はよくわかりませんので、機会があったらソニービルや量販店の店頭で聞いてみます。
なお、音漏れはごくごく一般的なボリュームであればほとんどありませんでした。外出した時、電車で隣に座った同居人にもちゃんと確認してもらいました。もちろん、耳を覆ってしまうほど髪の毛が長かったりボリュームがある場合はそれなりに隙間ができるのでその限りではありませんが…。
■総論めいたこと
実際のところ、ヘッドホンで音楽を楽しむこと自体、ミュージシャンが意図した音をオリジナルに忠実に再生できているのかどうかわかりませんし、それを確認するすべも知りません。それがどんなに高価なモニターヘッドホンであってもです。それゆえに、ヘッドホンは人それぞれの好みも評価に大きく影響してくるものでしょう。慣れという要素も大きいですよね。自分の場合、手持ちの製品を比較対象にするしか評価のしようがありませんでしたが、結果的に十分満足できる製品だと思いました。
それにしても、高音質なヘッドホンをこんなに手軽に持ち歩けるような時代が来るとは…。ポータブルオーディオで楽曲をロスレスで持ち歩くような人にとっては非常に魅力ある製品なのではないかと思います。少々お高いですが、その価値は十分あると、少なくとも自分は感じましたです。一年中こいつをお伴にというわけにはいかないかもしれませんが、EX90SLなどとうまく使い分けていければなあと思ってます。いずれイヤーパッドの交換は必須でしょうが、10年ぐらいは使いたいものです。1年の利用料が約2,000円、1ヶ月なら約170円程度で良い音が楽しめると思えばおよそ2万円という価格も安いと感じられるから不思議です。
ということで、ソニーファンに限らず、全ての音楽ファンに愛されるような名機にD777SLがなってくれたら嬉しいです。
【追記】米ソニーでも同ヘッドホンの発売について発表されました。日本は「SOUND WALK」ですが米国では「Altus」というネーミングなんですね~>INTRODUCING ALTUS: SONY’S FIRST PORTABLE HEADPHONES WITH 80KHZ FREQUENCY RESPONSE