ノイキャンヘッドホンの最高峰「MDR-NC60」を使ってみたけど…

少々時間がかかってしまいましたが、ソニーのノイキャンヘッドホンの最高峰といわれる「MDR-NC60icon」のインプレをお届けします。昨年度の下半期分で最後まで残っていたソニスタのAV商品15%オフクーポンとA800購入で獲得したソニーポイントなどを使ったので、定価のほぼ半額の12,000円強で購入できました。

nc60_1.jpg

パッケージには、ヘッドホン本体以外に、取り外し可能なステレオミニタイプの接続コードの1.5mと0.5mが一本ずつ、ステレオ標準プラグアダプター、航空機用プラグアダプター、そしてそれらをひとまとめに収納できるキャリングケースと動作確認用の単4乾電池が1本付属します。

nc60_2.jpg

付属のキャリングケースは結構良くできていて、本体以外に付属品一式を収納できるポケットがついてます。本体のハウジング部が90度反転するスイーベル式なのは、このケースや航空機の座席ポケットなどへの収納を考慮してのことらしいです。

nc60_3.jpg

ノイキャン機能を使うためにはバッテリーが必須ということで、NC60は右ハウジングに乾電池を収納するような設計になっています。ハウジングの下にある円いボタンを押してカバーを開いて乾電池を入れるだけ。ノイキャン機能を有効にするにはは、右ハウジングにあるPOWERスイッチをONにします。ノイキャンが有効な状態ではスイッチ上部のPOWERランプが赤く点灯します。ちなみに、乾電池の持続時間はソニーのアルカリで約30時間、マンガンで約15時間だそうです。なお、電池が消耗してくると同じく右ハウジングにあるPOWERランプが暗くなります。

nc60_4.jpg

ヘッドホン本体の作りは非常に丁寧で、メディアのレビューにも書かれていましたが質感はそこそこ高いです。イヤーパッドもD777SL同様にソフトでしっとりしており、装着感も非常に良いです。長さ調節の金具は平板タイプでメモリ入り。ヘッドバンドも非常に柔らかく頭が締め付けられる感覚はありません。この辺は金具の曲げが絶妙なんでしょうね。これもひとつの職人芸なのかもしれません。

nc60_5.jpg

一応、手元にある「MDR-D777SLicon」と比較してみました。サイズ的にはNC60の方がひとまわり大ぶりですが、パーツの構成が似ているため、設計思想そのものは非常に近いと感じました。SONYロゴが入っている部分も色こそ違いますが、3次曲面のヘアライン仕上げになってます。曲面はD777SLよりは緩やかで平面に近いですが…。

デザイン的には、非常にオーソドックスというかおとなしめ。カラーリングも、ハウジングのヘアラインパーツの円周部分とヘッドバンドの金属の平板を除き、大半がブラックなんです。出張が多いスーツ姿のビジネスマンが使っても違和感がないというところを狙ったのでしょうかね。個人的には好きなデザインですが、荒川静香さんは使ってくれなさそうな、ある種男性的なヘッドホンといえそうです。もちろん自分個人の先入観ですが…。

で、肝心要のノイキャン性能と音質についてなんですけど、正直、え~こんなもんなのという感じです。ノイキャンオフの状態では、音圧もなくフィルターがかかったような、音が奥に引っ込んでしまっているような印象です。ノイキャンオンでは、音質が一転。全体がブーストされたかのように定位や音像がくっきりするのですが、高域~中域が強調され、反対に低域が引っ込み気味なるのが気になりました。ちなみに、インピーダンス値がノイキャンオン時に40Ω、オフ時に100Ωだそうですが、これが何か関係しているのでしょうか。知識がないのでよくわからないのですが…。

D777SLと聞き比べてみましたが、NC60のノイキャンオン時に音量的にほぼ同等という印象。メディアのレビューにもあったとおり、NC60の場合はノイキャンオン状態で使用することをすすめていたのもうなずけました。ちなみに、以前購入した「MDR-NC32NXicon」はインナーイヤータイプということもあるのか、ノイキャンがオンでもオフでもさほど音量に変化は無いです。NC60の場合はノイキャンオンとオフであからさまに音量が変わるので少々とまどいましたです。NC32Xで感じた音質の変化は、「あれ、変わったかな?」というレベルなんですが、NC60の場合ははっきりと変化します。

必ずしも音が悪いとか聞きにくいというわけではないのですが、ハウジングにノイキャン回路が入るだけでこんなに音って変わるんだということを認識させてくれるのがNC60です。アナログの権化のようなD777SLと比べること自体間違っているのかもしれませんが、あまりの違いに少々驚きました。

また肝心のノイキャン機能ですが、先週末にウォークマンA808とNC60とNC32NXをもって渋谷までお出かけして検証してきました。NC60は1/6、NC32NXは1/4のノイズ低減効果があるようですが、移動中の地下鉄車内でも街中でも、ぶっちゃけ性能の違いを体感できませんでした。NC60は密閉イヤーパッドを採用しているのでその分ノイキャン効果も高いのかなあと思っていたのですが、必ずしもそうではなかったです。

あと歩行時に足から伝わってくる振動音がかなり気になりました。NC60は正直街歩きには向かないですね。もちろん、履いている靴によっても違うでしょうし、ノイキャンヘッドホンをしたままの歩行自体がある意味危険行為なのであまりやる人もいないとも思うのですが…。それと、これはノイキャンの宿命だと思うのですが、機能オン時はやはりそれなりにホワイトノイズが出ます。このヘッドホンが使われる環境を考えれば個人的には十分許容範囲です。

iconicon以上が購入後数日間使ってみた感じたNC60の印象です。ほんの数日間しか使っていなくて結論を出すのもどうかとも思いますが、正直なところ自分にはこのノイキャン最高峰と言われるヘッドホンの良さが理解できませんでした。好みの問題はありますが、ぶっちゃけNC32NXの方が自分には合っているというか、良いじゃんぐらいの勢いです。半額で買えたから良かったようなものの、もしも定価で買っていたらかなりがっくりきたかもしれません。当初は「DR-BT50icon」を買うつもりだったんです。ただ、そうすると使える機器が限られちゃうし、なによりデザインがD777SLとそっくりだったこともあって、汎用性を重視してNC60に決めたのですが、正直自分には必要なかったかもしれません。

ということで、少々厳しい評価になりましたが、これはあくまでSPA個人の感じた印象です。人によっては全く印象も異なります。なので、購入を検討しているという方は、絶対に視聴した方が良いと思います。高い買い物ですから、ポータビリティ性能についても見定めないとですね。

(やっぱり、ヘッドホンにも相性ってあるんですよ、きっと…。)


nc60_6.jpg蛇足ですが、一応BRM1と組み合わせても使ってみました。やはりNC32NX同様、ノイズが増えますね。BT50発表時に、ノイキャン&Bluetooth内蔵のヘッドホンが欲しいなんてことを言いましたけど、BRM1のサイズを考えると十分ハウジングに内蔵できそうな気もします。がしかし、電気的な回路が増えれば増えるほどノイズは増えそうだし、どんなに優れたドライバーユニットを使っても、音質は変わるのだと言うことが今回よーくわかったつもりなので、はっきりと前言撤回いたします。

インナーイヤータイプについてはNC32NXのようなタイプで実現できるなら使ってみたいですが、BRM1やiPod shuffleのサイズと重量を考えたら、Bluetoothじゃなくても良いんじゃないの的な話にもなりますからね。ということで、Bluetoothで音楽を楽しむというスタイルは、むしろ多機能化が進むケータイやスマートフォンやユニバーサルプレイヤー化が進むPSPなどで使われるケースの方が増えていくのかもしれません。

【当サイト内の関連エントリー】
ノイキャンヘッドホン最高峰「NC60」はNC機能のON/OFFで音質が変わるのか、変わらないのか?
音楽再生時に自然なノイズ低減効果を体感できる「MDR-NC60」
ノイキャンヘッドホンフラッグシップ対決~SONY NC60 vs BOSE QC3
ネックストラップタイプのノイキャンヘッドホン「NC32NX」を試す
アウトドアヘッドホンの最高峰「MDR-D777SL」に隠された秘密とは
ステレオヘッドホン「MDR-D777SL」レビュー