ウォークマン スティック「NW-E507」レビュー(6)

Moraについて

ソニーも出資するLabelGateの「Mora」(すでにこの説明がわかりにくい…)について感じたことを少し書きます。ウォークマンスティック発売後にSonicStageからサイトを呼び出しててみたら、オープン1周年を迎えたとかで、なにげにリニューアルしていて、以前よりはデザインも洗練された印象を受けました。

mora.jpg以前は試聴にも別なソフトが必要でしたが、SonicStage ver3以降は試聴機能も統合されたようで、他のソフトを立ち上げる必要もなく、同一画面上で試聴可能になってます(できて当たり前だし、わざわざ褒めるようなことも無いのですが…)。そんなこともあって、少しは期待して良いのかと思ったら、使い勝手はさほど以前と変わらず、取り扱いの楽曲が結構増えたなあといった印象。楽曲が増えることはイコール選択肢が広がるわけで、音楽ファンにとっては素直にありがたいことなんでしょうけど、問題となるのはやはり楽曲の検索機能でしょうか。アーティストやアルバムタイトル単位以外に、キーワード検索も用意されているので、意外な楽曲との出会いも可能な点は評価できます。

しかしながら、日本の国内向けのサービスということからなのか、データベースに英文と和文が混在していて、使い勝手がどうにも微妙です。例えばTOTOをカタカナ入力して検索するとどういうわけか「森田公一とトップギャラン」やら「キンモクセイと東京ジェンヌ」がリストアップされていたりします。反対に漢字の邦楽アーティストをアルファベットで入力すると検索対象にならなかったりと、なんともちぐはぐ。

と、文句ばかり言ってもなんですので、手っ取り早くEdyを使って何曲か購入してみることにしたんですが、これがまた制約が多いんです。SonicStage上でMoraを利用する場合は、Edyによる決済自体ができません。クレジットカードまたはカード情報の事前入力による簡単決済サービスを利用すれば遙かに手軽に楽曲が買えるのですが、少額決済だからこそ個人情報が漏れにくい電子マネーを使えるようにして欲しいんですけど…。ちなみに、IEから直接Moraを利用する場合はEdyが利用可能です。しかしながら、ここでも問題が。なんと、楽曲の複数購入ができないのです。なので、1曲ずつ購入手続きをしないといかんのです。せっかく選んだ曲もリストから削除するしか選択肢が無く、再度曲を検索しないといけません。ああ、なんてめんどくさいんでしょう。

嫌気がさしたついでに使い勝手の点で気になることがいくつか。楽曲をカートに入れた後に、カート画面から「お買い物を続ける」をクリックするとMoraのトップページに戻るんですが、お気に入りのアーティストだったりした場合に、他のアルバムの曲も聴いてみたい人にはかなり不親切な仕様のように思います。直前の画面に戻ってくれれば、アーティスト名のクリックだけで他のアルバムへのアクセスもしやすくなるはずなのに…。また、アルバム丸ごと購入は割安になっているようですが、楽曲数に関係なく曲単価が決まっているため、中にはほとんど価格に差がないものや、アルバム丸ごと購入するよりもバラで全曲買うほうが安かったりする場合があります。この辺は、もっと融通を利かせてもらわないと混乱の元になるのではないでしょうか。それと、視聴した履歴がわからず、もう一度あの曲をと思ってもすぐにデータにアクセスできないのがつらいです。やっぱり履歴やブックマーク機能みたいなものがあると使いやすくなると思うんですが…。とまあ、Moraへの不満はまだまだたくさんあるのですがきりがないので別な機会にツッコミを入れることにします。

そんなこんなで色んな不満こそあれ、楽曲が購入できさえすればさほど苦労することなく、SonicStage経由でウォークマンスティックに転送できます。配信されている楽曲は大半がATRAC3でビットレートが132kbpsのものですから、個人的にはポータブルオーディオで聞く分としては許せるぎりぎりの音質といったところ。もちろん、着うたなどと比べて音質は良いです。もちろん、ポータブルオーディオへの転送回数は3回という制限付き。

価格については、アルバムのまとめ買いで100円程度になるものから、一曲300円を超えるものもあるなど、レーベルによってばらつきがありますが、概ねCDを購入するよりは安く提供されているようです。自分にとっては、まだまだ魅力を感じる楽曲がそろっているようには感じないので積極的な利用はできそうにありませんが、一部のアーティストのシングル曲などについては、アルバムがでるまでのつなぎ的な感覚で購入するのもアリかなあといったところです。最近はCDシングルも1,000円を超えるものが当たり前で、ぼられているような気さえしますから…。そういう意味で問題となるのがレンタルCDショップとの競合ですね。シングルは単価が下がれば競争力が上がるかもしれないけど、アルバムはさすがに厳しいですね。iTMSが上陸しても、この辺の問題は大きくのしかかってくるのかもしれません。

と、さしたる結論めいたこともなく、ウォークマンスティックのレビューからも脱線気味になってしまいましたけど、今後のポータブルオーディオの利用方法の一つとして確実に広まって行くであろうという意味で感じたことを書いてみました。

ちなみに、今回のレビューを書くにあたって購入した曲はコレ↓。


nwe507_t&d.jpg

Moraやソニーは、少しは俺の話を聞いてくれるでしょうか…。

【関連ニュース】
「iTMSが早く登場すればいい」――Moraプロデューサーが語る音楽配信への期待(前編)
「2005年は“改善”の年」――Moraプロデューサーが語る音楽配信への期待(後編)
「今は足場固めの時期」――「OnGen」が目指す音楽配信のカタチ(前編)
大手レコード会社着うた参入妨害問題、公取委が6月審判開始