ハックルバック、ティン・パン・アレーを経て渡米した佐藤博氏の帰国後初のソロタイトルとなった「awakening」がついに9/21に再発されました。1982年の作品ですが、当時の自分は19歳。洋物AORの全盛時代にあって、邦楽アーティストらしからぬシンプルでハイセンス(死語)なジャケットデザインは貸しレコード屋でも目立ってましたっけ。リアルタイムでは手を出さなかったのですが、とある和製AORコンピに収録されていた「Say Goodbye(山下達郎氏がギターで参加)」がいたく気に入り、廃盤となっていたオリジナルアルバム(CD)を血眼になって探してみるも見つからず…。なにせ、レーベルが今は亡きあのアルファ・レコードですから、再発は望むべくもないのかなあと思っていたところに、なんと、ソニー・ミュージック・ダイレクトから全曲リマスタリング&リミックス、さらに佐藤博氏のインタビューを収録して再発されたのです。ありがとう!ソニー・ミュージック・ダイレクトさん。良い仕事するじゃないですか。(ソニーBMGは嫌いだけど…)
ということで、早速針をレコードに、もといCDトレイに入れてプレイしてみましたが、いや~、いいっすね~。全く古さを感じさせないサウンド。実際は当時最先端だったLinnドラムを多用した多重録音で作られた楽曲ばかりなのですが、打ち込み臭さを感じさせない抑えの効いた音づくりがとても気持ちよいです。それほど音数があるわけではないのに、サウンドにものすごく深みがあるように感じるんですよね。リマスタリング&リミックスが効いてるのかな…。82年に「For You」をリリースして日本のポップス界に不動の地位を築いた山下達郎氏もギターバッキングで参加していますが、達郎氏が佐藤氏同様のアプローチで多重録音にチャレンジしたのは90年代に入ってから。佐藤氏のアプローチがどれだけ時代を先取りしていたかが今になってよくわかりました。曲もバラエティに富んでいて、通しで聞いても全く飽きません。というか、日本人でここまで洗練した音づくりができていたことに驚きすら感じます。佐藤氏のその後の作品を数枚CDで所有しているのですが、どれもがこのアルバムの持つようなソフト&メロウな感触が微妙に足りないのですよね。80年代前半にあった独特の空気感みたいなものが、いまだに自分を支配しているだけかもしれませんが…。にしても、20年以上経っても全く色あせないサウンドプロダクションはお見事としか言いようがありません。自分の中では無人島に持っていきたいアルバム(CD)の仲間入り決定っす。