Sony Dealer Convention 2007 視察レポート(11)~ヘッドホンセミナー編(2)

表だって出しにくいような秘話を話せればという前置きでスタートした「MDR-EX700SLicon」のセミナー。講師は、オフィシャルサイトだけでなく、NHKのサラリーマンNEOの「はたらくおじさん」コーナーで、ヘッドホンを作るおじさんとして全国にそのお顔と名前をとどろかせた(?)五代目耳型職人の松尾伴内じゃなくて松尾伴大さん。

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EX700iconの特徴はそのユニークな形だけど、それは装着性と高音質の両立を目指した結果ということで、それらの検証に使われたあの耳型がいきなり登場。実際の人の耳をいじるのは大変だけど、グリグリやれる(いじり倒せる)のが耳型の良さ。しかも切っちゃえる!人の耳は外からしか見えないが、切ることで中が見えるというのが大きなメリットになるそうです。EX90もこの耳型を実際に切って、色々な耳の外耳道の構造を解析した結果、あのようなカタチになったとか。ちなみに、耳型の数ですが、耳型職人として保管しているのは昔の石膏で型を取っていた時代から数えると400以上あって、松尾さんが5代目になってから20個程度採取したので現段階で計420個ぐらいはあるようです。そういえば、NHKでもそうおっしゃってましたね。

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今回のEX700iconについても、16mmのドライバーユニットをどのように人の耳に違和感なくおさめられるかを、この耳型を活用したり、実際に人に装着してもらいながら検討していったと、そういうことのようです。その、16mmドライバユニット採用により、ダイナミックレンジ、周波数帯域を広げることができたので、厚みのある音、低音がゆったりしていて高音も伸びがあるという音作りをすることができたそうです。

Webでも公開中の分解図を元に解説してくださったのですが、パーツはEX90よりも減っているそうなんです。減ってるんですけど言いようによっては増えているとか。それが、ドライバーユニット。クルマで言うエンジンの部分に、非常にこだわったのがEX700SLiconだそうです。筐体にマグネシウム合金を使ったことで、材料の肉厚を薄くすることができたと。通常のプラスチックだと0.7~0.8mmぐらいにしかできないけど、マグネシウムだと0.5mmぐらいまで薄くできるとか。

また、ドライバーユニットと本体が一体構造になっているのも大きな特徴。EX90は分解図ではドライバーユニットを1つで示してしていたけど、EX700iconではドライバーユニットを分解して見せているそうです。これは、今回のドライバーユニットをEX700iconのために1から作っていているからなんですって。部品が減ったのは、ドライバーユニットをハウジングの中に直接組み込んでいるから。クルマで例えるなら、ボディにエンジンの機構を組み込んだと、そういうことです。そうすることで、薄くできるし、部品が減ることで、部品間の結合部の余分な振動も無くなるというメリットもあるとか。

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また、EX90の一台一台の手作業による調整は、自分たちが思っていた以上にお客様の琴線に触れる部分があったとこのとで、今回のEX700iconも同じことをやっているそうです。同じことやっているのだけれども、今回はわざわざ独自の音響調整機構を取り入れたのが大きな違いだそうです。EX90の時は組み立ての過程で調整したそうなんですが、EX700はこの機構の採用によってお客様の手に渡る、つまり完成した状態で最終の調整ができるとか。調整専用にネジを使った機構を入れることで、これまでは感覚的にやらなくてはいけなかったところをネジの調整という比較的微調整がきく構造を取り入れた点がEX90との大きな違いみたいです。

また、ドライバーレジスターという部品は、圧縮ウレタンといって、発泡ウレタンを圧縮したものを使用しており、伸縮性をもった通気抵抗部品になっているので、その圧縮具合(つぶれ具合)によって、通気量が変化することを利用。機構的に圧縮ウレタンをつぶしたり緩めたりして調整するそうです。というようなことで、EX700iconは最後まで人の手で調整・管理された音質で出荷できるということなんだそうです。

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440kJ/m3のネオジウムマグネットについても説明がありました。数字だけ見ると高磁力のマグネットだなあということはわかってもらえるのだけれど、実はこれが普通に作れないんだそうです。通常のマグネットは上から磁力をかけながらプレスするので縦方向の磁力を持ったドーナツ状になるが、縦に磁力が向かおうとしているところを、上からつぶすので少しゆがんでしまうのだとか。それを避けるために、磁力を横にかけながら横を向いているまま押さえる方式の「横磁場プレス法」を採用したそうです。なんのこっちゃな話ですが、要はこのやり方だと磁力が弱まらないんですって。ただ、この方法だと磁石が平べったくならないので、ある程度のカタマリでつくらないといけない。で、それを削り出して円盤状にしているのだそうです。

通常のヘッドホンのマグネットがドーナツ状のカタチをしているのは、実は生産性を上げるためだったりするそうなんですが、横磁場プレス法だと穴が空けられないので作るのが難しく、手間がかかるので一般的には使われないそうです。そうい工法が使われるぐらいですから、EX700SLiconはそれだけの手間をかけてやっていますと、そういうことなんですね。

ちなみに、440kJ/m3のネオジウムマグネットを採用した機種は過去に二つ。「QUALIA 010」とQUALIAのMDに付属し後に単品販売された密閉型インナーイヤーレシーバー「EXQ1」だけだそうです。マグネットの強さはクルマで言うと排気量の差、磁力を高めることで音圧を高めることもできるし、信号に対する振動のレスポンスも高めることができるということで、非常にメリットがあるとのこと。

またEX700iconについて、他のパーツと比べてコードが普通だねと良く言われるそうですが、実は見た目は普通だけどが中身が違うんだそうです。通常は芯線という細い導体性の材料を12本を束ねているがEX700iconは19本使っている。こうすることで、導体抵抗の低減や屈曲に対しての強度が増すメリットがあるそうです。また、コードの外側がそのままなのは意味があるそうです。コードに触れたときのこすれ音などがよく言われますが、音楽の邪魔をしない材料に関するノウハウをソニーはたくさん蓄積しており、検討を重ねた結果が普通に見えるコードに落ち着いたと言うことです。布巻だと高級感は出るが音質を損ねる。見た目が普通でも音質が良いほうが良いと言うことだそうです。

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その他、イヤーピースや付属のケースについての簡単な解説がありましたが、それは割愛して、この後、質疑応答タイムになりましたが、その前に実際の音を聞いてみようと言うことで、CDプレイヤーとEX700iconの組み合わせを皆で順番に体験しました。サンプル音源は、オルガントリオ「Soulive」のアルバムで、これを選んだのはEX700iconの低音の表現能力を良く体感できるからだそうです。下は実物の画像。色々と角度を変えて押さえてみました。ちょっと大きめですが、お許しを。

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で、自分のところにそれが回ってきて、実際に耳にしてみてまず驚いたのがその軽さ。ネオジウムマグネットがEXQ1と同じものと聞いていたこともあって、それなりの重さになるのかなと思ったのですが、そうじゃないんですね。EXQ1の重さは真鍮のメタルハウジングでしたから全くの見当違いだったわけですが、そういう変な固定観念を持っていたので逆に軽さが新鮮に感じたんでしょう。

そして、肝心の音ですが、一言で言うと「パワーがある」ヘッドホンですねコレ。EX90には無いキャラクターです。音の厚みだけでなく、熱さそのものまで感じられるようなイメージ。エネルギッシュな音楽をよりエネルギッシュに聞かせる増幅感のようなものを感じました。装着感はちょっと不思議で、これは後のソニービルでも確認したのですが、浮いているというか、ハウジングが耳介に触れずにイヤーピースだけで固定されるような感じなんです。これは本体の軽量化と新しいイヤーピースの構造によるものなんでしょうね。一応、その場で手持ちのウォークマンにつなぎ替えて視聴させてもらったのですが、普段聞き慣れている音楽で聞くのが一番わかりやすいですね。AB’Sのアルバムを聴いてみたけど、音に力があることを感じられました。

とはいえ、音は難しいですからねー。店頭やショールームなどで視聴する機会があるなら、普段聴いている音楽を入れたプレイヤーを持っていって聴かせてもらった方が良いと思います。開発にどんな苦労があろうが、どんなに高いパーツを使っていようが、最終的に信じられるのは、自分の耳ですから。自分にしても、3万オーバーのヘッドホンは今の今まで買ったことはありません。だからこそ、こうして視聴できる機会を持てたことはありがたいことでしたが、やはりその場での視聴は限りがあるということで、この連休最終日にソニービルで再確認してきたわけですが、最終的な結論としては、とにかく買ってみようと決めました。

イヤーピースのバリエーションを色々試してみたいし、ジャンルの違う音楽でどんな音が飛び出すのかも試したい。つまりは、このヘッドホンで遊びたい。そう思ったからです。実売でもおそらく3万前後ですし、決して安い買い物ではないのですが、Rolly同様、面白いじゃないですかー、最近のソニーのオーディオって。なんか載っかってみたくなったんです。ということで、おサイフ的には非常に苦しいのですが、一番大好きな音楽のための投資ということで、自分を納得させました。

と、話がそれましたが、セミナーの最後の質疑応答で、自分はEX700iconの遮音性についてたずねてみました。EX90は大ヒットしたけど、数少ない不満として音漏れを指摘する声が多いように感じますが、その辺についてEX700はどうなってるんですか?というような質問です。(ちなみに、質問した時点では自分がソニ☆モバのSPAであることはお伝えしていません。)

iconiconこれに対しての答えは、EX700は最初から意識して遮音性を高めているけど、EX90で遮音性の低さが指摘されたからという意味合いでは無く、あくまで、高音質を追及する上で、遮音性も要素の一つとして捉え開発しました、と、そういうことでした。逆に考えると、遮音性能を意識した結果、EX90とはまた違ったキャラクターを持つヘッドホンが生まれたということなのかもしれません。だからこそ、ヘッドホン開発って面白いのかも。

そんなこんなで、セミナーもお開きになり、改めて正体を明かしてご挨拶。とりあえず、このサイトの存在については認知していただけていたようで、うれしいやら恥ずかしいやらでしたが、自分の耳でよければ協力させてくださいなどと、大胆不敵かつ図々しいお願いをして、会場を後にしたSPAでございました。もちろん、耳型は誰のもので良いというわけでなく、すでにある420個とは違うカタチの、松尾さんなりの目的にかなう耳でないといけないわけです。ただ、一言松尾さんが「面白い耳ですね~」とぼそっとおっしゃったのは聞き逃しませんでしたよ~。もう、いつでもオフィスに行くから取って取って、オレの耳型ーっ!(<変態か)・・・という、冗談はさておき、これまた非常に楽しくてためになるセミナー、本当にありがとうございました>松尾さん。発売までまだ日がありますが、最後のチューニング頑張ってください!

耳介、もとい、次回はRollyセミナー編を予定しています。

(勢いで書いたんでまた長くなっちまいましたが、何か思い出したら追記&または修正します。かなり記憶も薄れてきましたが、あと少しで終わるんで残りもがんばりますー。オレの記憶領域はウォークマンの1GBモデルよりも断然少ないのですが、今回はかなりクリエのボイスレコーダーに助けられました。ロケフリの時は録音し忘れたんですけどね・・・)

秋なのに真夏のようだった野音のキリンジライブ

連休最終日となる昨日、日比谷野音のキリンジライブに足を運んできました。少し前の予報だと雨だったのですが、昨日の東京は真夏のような暑さ。ライブで堀込弟が、雨に合う曲をチョイスしてそれっぽくアレンジしてきたのに降らないよー・・・みたいなことを言っていたぐらいです。まあ、それでも日が暮れてからは、時折涼しい風が吹き、曲と曲の間で虫の音が響き渡る、夏の終わりと秋の訪れを五感で感じられる、実に風情のある素晴らしいライブとなりました(あの虫の音がセミだっらと思うとぞっとするものがありますが・・・)。なによりビールが美味かったっす。

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野音どころか屋外ライブは初めてだったようで、嗜好を凝らした曲のセレクトやアレンジに、そこかしこにいるコアなファンがうなる声が聞こえてきましたが、個人的には、屋外ライブということでいつもよりもさらにゆったりと演奏されるスローなナンバーとか、ベースが細かく動かない4つ打ちリズムの曲が聞きやすかったように感じました。特に良かったのが、今年の夏の異常な天気を象徴するタイトルの「クレイジー・サマー」と、暖かさと懐かしさを感じるポップな新曲「今日も誰かの誕生日」。後者は9/25にダウンロード販売されるそうですが、キャッチャーなサビにメロメロでした。全体を通じて、堀込兄のギターカッティングと伊藤隆博さんのオルガンが気持ちよかったですー。サポートの面々も演奏力のある人ばかりなので安心して聴けるのがキリンジライブの良さでもありますね~(ロッテンハッツから2人とジューシーフルーツとNONAから一人ずつ!)。うーん、また行きたいなキリンジライブ。そして、いずれ出るのであろうニューアルバムも楽しみ!

ライブの後は、同居人とコリドー通りのパブ「ハブ」(ん?)で一杯引っかけて(<おやじか)早めに帰宅しましたが、実はキリンジライブの前に自分は銀座ソニービルに行ってきたのでした。目的はSDCであまりじっくり触れなかったウォークマンSと、この後レポート予定のEX700SLの音を再確認するため。祭日ということで人でも多く、オーディオのフロアではRollyのデモも行われていたので、じっくりとはいかなかったのですが、それでもSDCの時よりは時間をかけて確認できたので良かったです。

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ただ、EX700SLとPFR-V1の展示場所はあそこで良いのですかね。一応高級路線なんだから、展示場所も他とは少し差別化したほうが良いのでは。EX700は密閉型なのでまだいいですけど、PFR-V1は周りの音が思い切り聞こえますからね・・・。あれではせっかくの製品コンセプトも水の泡。誰がやったのかわかりませんけど、スピーカーのコーン片方は潰されてました。そういうトラブルを回避する上でも、比較的静音な場所で、大人のコンポと一緒にするとか、製品をしっかりアピールできる方法を考えた方が良いと思いますが、いかがなんもんでしょう・・・>ソニービルさん。(まあ、他のフロアをじっくり見たわけではないし、もしかしたら複数展示されている可能性もあるのですが、ヘッドホンコーナーがあまりに十把一絡げに見えたもので・・・)

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Sony Dealer Convention 2007 視察レポート(10)~ヘッドホンセミナー編(1)

ロケフリセミナー終了後、しばしの休憩をはさみ、ヘッドホンセミナーへと突入。このセミナーに限っては、1時間で「パーソナルフィールドスピーカー(PFR-V1icon)」と密閉型ヘッドホン「MDR-EX700SLicon」の二つの製品のプレゼンが行われました。前者は厳密にはヘッドホンではないのですが、ひとまずヘッドホンセミナーとしてくくらせてもらいました。

ということで、まずは「PFR-V1icon」について。コンベンション会場では、ほんの数分しかいられなくて、マイケルジャクソンの曲をほんの少し聴いただけでしたが、そこから出てくる低音にびっくりしたことだけはホームオーディオ編でお伝えしました。会場では視聴だけで技術的なことも聞けずじまいでしたが、慌ただしい中でもパネルの写真だけは押さえていたようで、まずはこの製品の特徴を知っていただくという意味でそちらの画像をご覧いただきたいと思います。

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「スピーカーユニットを耳介(じかい)の斜め後方に配置。中高音は直接音に加え耳介から反射した音が外耳道に届き、低音は新開発エクステンデッドバスレフダクトが外耳道に直接届けることで、リアルで臨場感あるサウンドが耳もとで力強く響きます」

とパネルに書いてありますが、わからない人にはなんのこっちゃですよね。今回のセミナーでは、このエクステンデッドバスレフダクトを採用した経緯や、このスピーカーがどういう過程を経て商品化されたのかが、オフィシャルサイトの開発者インタビューにも登場している山岸さんご本人の口から語られました。以下のレポートをお読みいただければ、このエクステンデッドバスレフダクトという名前にするとカッコイイ技術が実にアナログな驚きのアイテム活用により生まれたことをご理解いただけると思います。

さてさて、始めに自己紹介があり、山崎さんがいままでどんな製品開発に携わってきたかを説明してくださったのですが、「MDR-E484」、「SRS-N1000」、「SRS-GS70」って言われてすぐにその形を思い浮かべられる人がいたらたいしたものです。下はその画像ですが、これら以外にPC向けのアクティブデスクトップスピーカー「SRS-Z1」なども手がけていらっしゃったとのこと。そして、変わり種の肩掛けスピーカー「SRS-GS70」が今回のPFR-V1iconの開発に直接つながったようなのです。

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この後、簡単な製品の概要解説があり、先述のわかりにくいパネル解説を簡単に説明してくださいました。PFR-V1iconは、スピーカーが耳のすぐ前にあるから、スピーカー音が、あるものは直接、あるものは耳に反射して、合わさって鼓膜に伝わること。また、耳のカタチは一人一人違うから反射している周波数も違うんですって。だけど、自分の耳に反射して聞こえるからこそ、自然に聞こえるんでそうです。(10へぇー)

もっとすごいのが、エクステンデッドバスレフダクト。耳の前にスピーカーを持っている商品は何十年も前からあったそうなんですが、低音を出すためにスピーカー自体がかなり重くなってしまっていたそうなんです。PFR-V1iconはバスレフ型という機構を利用して、通常だとキャビの中にダクトが入るところを外に出し、エクステンデッドバスレフダクトという名のパイプを開発。このパイプを使って耳の穴に直接低音を出すことができたので100gという軽量化も実現できたのだそうです。また、軽量化ができたから商品化されたということでした。逆に軽量化できなかったら日の目を見ることはなかったってことですね。

また、どのオーディオの教科書にも書かれているそうなんですが、スピーカーというのは点音源が良いとされているそうです。そのためにはスピーカーは小さければ小さいほど良いとされているんですって。一般的なスピーカーは、ユニットの前から出た音、後ろから出た音、スピーカー自身のバッフル面からの反射音など、原音以外の音がたくさん加わるのだそうです。それに比べてPFR-V1iconは、原音以外の音ものっているのだけれども、小型で耳に近距離だということもあって、ひずみ感がわかりずらい(原音以外の音を感じずにすむということでしょうね)のだそうです。なので、本来スピーカーから”だけ”出ている音に非常に近い音が聴けるのだそうです。(20へぇー)

iconiconと、以上のような説明があった後に、PFR-V1iconが誕生した軌跡を、プロトタイプを使いながらその場で順を追って説明してくださったのですが、まー、これがすごかった。肩掛けスピーカー「SRS-GS70」の開発後、今でも継続販売中のアクティブスピーカーシステム「SRS-AX10icon」を手がけたそうですが、なにせ小型ですから低音が出ないと・・・。

そこで、会社の自販機にあるストローを持ってきて、半分に切って加工して、キャビにチューインガムのような粘着性のゴムで付けてみたと。それが下の写真の中央。基本的にはこれで開発完了だそうです(ここで一同大爆笑)。難しかったところはストローのカットだったそうで、この発言にも大爆笑でしたが、正味数分の出来事とはいえ、これがまさにエクステンデッドバスレフダクト誕生の瞬間だったということなんですね。(満へぇー!)

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で、このストローの付いた「SRS-AX10」から出る音を聞かせてもらったのですが、まあ、これが不思議と低音が出るんですよ。参加者一人一人が実際にストローを耳に当て聞いて確認しましたけど、自分を含め、皆、素直にびっくりでした。理屈はちゃんとあるんだけど、音は見えないですからね。その後、「ということで、開発費はほとんど0です」との発言にまたまた皆大爆笑。

ただ、実際はそこからが非常に大変な苦労の連続だったそうです。多少なりとも耳から離して使うということで、高出力のために磁気回路を強くする必要があり、ネオジウムマグネットは今使えるもので最高のものを使い、ただマグネットを強力にしてもダメなので磁性材料(だと思うのですが)を良くしないといけないということで、試作品に通常は鉄を使うところを値段が鉄の100倍もする「パーメンジュール」という合金を使ったそうです。

聞き慣れないこのパーメンジュールという金属、マニアックなホームスピーカーの数十万円する磁気回路に使われているのだとか。で、実際に音を聞いてみたらあまりに良くて、そこからもう後戻りできなくなってしまったのだそうです。実際、この合金を使うことで定価が5千円あがっているとのこと。試しに使ってみたものの、パーメンジュールが持つ特性も手伝って、結果的に良い音作りにつながったと、そういうことのようでした。

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以降は、音量のでないPSPやバイオで快適に使えるようにブースターを付属したこと、リスニングルームを手軽に持ち運ぶという意味で付属品が全部収納できる専用ケースを付けたこと、装着方法のコツ、などの説明がありましたが、その辺の詳細は割愛して、最後に商品化に苦労したエクステンデッドバスレフダクトの加工についての説明がありました。素材や塗装方法、難しい曲げ加工、などなど、耳に直接触れるパーツということもあって何度も何度も試作を重ねたそうです。また、低音がはき出される穴の向きが最終的には当初とは逆になるなど、商品化への道のりには実に多くの試行錯誤が繰り返されたようです。

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ちなみに、今回のセミナーで紹介してくださったエピソードの大半は、オフィシャルサイトの開発者インタビューでも読むことができます。自分は何分にも技術的なことはわかりませんので、そちらもあわせてお読みいただくことで、このスピーカーが生まれた経緯や、そこに込められた開発者の熱意を感じ取っていただけると思います。ということで、楽しいセミナー本当にありがとうございました>山崎さん。

iconiconこの「パーソナルフィールドスピーカー(PFR-V1icon)」、誕生の背景やその構造、音へのこだわりや、使用感を含め、非常にソニーらしいユニークな商品であることは間違いないです。自分も先立つものがあればという前提ですが、素直に欲しいと思いました。

あ、でもその前にまずは自分の家にある小型スピーカーにストローをくっつけてどうなるか試してみようかな・・・。

次回はいよいよ耳型職人登場のEX700SLセミナーのレポートです。

Sony Dealer Convention 2007 視察レポート(9)~ロケフリ編(後編)

コンベンション会場を後にしたSPAが向かった先は客室棟に用意されたセミナー会場。プロローグ編でお伝えしたように、自分が希望したセミナーは、14:30からのロケフリ、15:30からのフィールドスピーカー&ヘッドホン、16:30からのRollyの3つ。ということで、ここからはセミナーの模様を個別にレポートしていきます。まずは、ロケフリ編の後編としてロケフリセミナーの模様をレポートします。

セミナーは、今回発表されたハイビジョン対応ロケフリの商品説明、開発秘話的な内容を含む実機を使ったデモ、質疑応答という流れで行われました。会場前方にはプレゼン用のテレビとロケフリの受信機が接続されたデモ用のテレビが、後方に送信機とソース元のBlu-layディスクレコーダーなどが準備されていました。

冒頭の商品説明では、6本のセクターアンテナを搭載することでいかに安定したハイビジョン映像の伝送が可能かをパワポで解説。従来のベースステーションでは、2つの無線用アンテナを搭載しているそうなんですが、アンテナの指向性が広いため、希望波(クライアント機器とつながる電波ってことでしょう)と共に妨害波も受信してしまうことがあったそうなんです。今回の新製品はセクターアンテナ方式を採用。しかも6本という従来の3倍のアンテナを搭載することで、それぞれの指向性が狭くなり、妨害波の影響を受けにくくなることで希望波を安定伝送できるんだそうです。

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以上のような前振りがあって実機デモに突入。受信機を接続したテレビに、Blu-layディスクレコーダーと接続した送信機の映像(007カジノロワイヤル)が映し出されたのですが、画を見る限りはワイヤレスで伝送されてきていることを意識させない十分なクオリティ。その辺はコンベンション会場でみたものとなんら変わりません。と、ここで解説が入り、今見ている映像は後方にあるBlu-layディスクレコーダーからの画ではなく、別室にもう1セット送信機器を用意していて、そこから伝送しているとのことでした。

自分が前編で確認できなかった、壁などの障害物があった場合でも安定伝送が可能なのかどうか、ということをこの場で証明してくれたことになりました。ホテルの客室の壁がどれぐらい厚いのかわかりませんが、他の部屋でも無線機器が多数使われていることを考えても十分な性能といえるのではないでしょうか。我が家のような、リビングと寝室が壁一枚で隣り合わせの間取りであれば間違いなく余裕でしょうね。

(参考までに、15日に会場に足を運んだ、ゆーじゅさんから「SPAさんの記事の中で電波の干渉について心配されていたので聞いてみたところ、10Mbps程度出れば問題なく再生出来る仕様なのであまり心配する必要はないのでは?とおっしゃっていました。遮蔽物も6本のアンテナで良好な電波を選択しながら繋いでいるので無線LANが使える環境であれば大丈夫では?とのことでした。」とのご報告もお知らせいただいています。ご丁寧にありがとうございました!>ゆーじゅさん)

さらに驚いたのは次に行ったデモ。なんと、送信機に強制的に電磁波を浴びせ、セクターアンテナがどういう動きをするかをお見せしようというのです。電磁波を送出する機器は大人の事情があって、白布で覆われ見えないようにしてありましたが、そこから伸びたポールから至近距離でロケフリ送信機めがけてノイズを浴びせかけるという反則技(<販促技かも?)。

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ただ、ロケフリ自体は見たまんまのブラックボックス。本体カバーを外してアンテナを露出させたところで、どのアンテナが受信機とつながっているかわはわかりません。そこで用意されたのが、このデモのために開発したというアンテナと連動するLED付きの回路。これを送信機の上に装着して、実際に受信したアンテナがどれかを視覚的に見せてくれるというわけです。もう、そこまでやるかー。でも、すげーです。

従来のPK20と専用ロケフリモニターの組み合わせの後にHome HDで実演するという順番で、前者で試したときは障害によってモニターから出ていた画は瞬く間に消えてしまいました。その後のHome HDでは、障害波を放出後は最初の方は受信機側にまったく影響が出ずに、アンテナがこんなに優秀だったっけ?と関係者が驚く場面もありました。が、実は送出機器側のコンセントが抜けていて電源が全部落ちていたみたいなオチ(?)もあって、それが逆に場が和む要素になったりしました。とまあ、色々ありましたが、受信機側の障害が見て取れてからは、アンテナが切り替わる様子も確認できましたし、切り替わった後の受信側の再表示までの時間も非常に短かったように思いました。6本のセクターアンテナ搭載はダテじゃないということをこの実験を通じて証明してくれたということです。

下の画像はロケフリ Home HDの送受信機それぞれの背面です。すでにWebなどでも画像は出ていますが、従来のロケフリとは色々と違う点が見受けられます。受信機にD端子の切替スイッチ、送信機にワイヤレスチャンネル切替スイッチが用意されているのは、今回のロケフリが単体のシステムであることを象徴していますね。また、今回初めて受信機にUSB端子があることに気がついたのですが、質疑応答の時間に質問してみたら、これをファームのアップデートに使うらしいんです。それもポケットビットなどのUSBメモリー経由になるそうです。なるほどなあ。でもなんで送信機側になくて受信機側にあるんでしょうね。今気がついたので理由はわからずじまいですが・・・。

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こちらはロケフリ Home HDに付属するリモコンですが、これまた立派なものが付きましたよー。ソニーのテレビに付属する一般的なリモコンに近く、サイズもそれなりです。送信側がソニー製ならそれらに付属するリモコンと同様の使い方が出来そうです。また、任意の機能を割り当てられるFキーが4つ用意され、活用の幅がさらに広がりました。この他、PK20から採用されている各種学習リモコン機能もあり、他社製品であってもバリバリ使えるのは従来どおり。ソニーでは実際にたくさんの他社製リモコンを入手して、設定をデータベース化しているようですよ。いやはや、ご苦労様です。

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最後の質疑応答の時間では、色々な意見が飛び交ってました。後で気がついたのですが、このセミナーにはCNETのブログなどでご活躍中の渡辺聡さんクロサカ タツヤさんが参加なさっておりました。セミナー開催前からやけに難しそうな話をしている人たちがいるなあと思っていたのですが、それが彼らだったとは・・・(実はこの時に初めて安倍総理退陣のニュースを知ったのでした)。ちゃんとご挨拶しておけば良かったと反省することしきりです。

ちなみに、渡辺さん達のSDCレポートは彼らのニュースクリップサイト「techviews.jp」で読むことができます。簡潔なレポートですが、一介のソニーファンとは視点が異なるところもあって大変興味深いです。なお、今回のイベントでブロガー招待枠が用意された意図や目的などについて、SMOJ御子柴課長さんが彼らのインタビューにこたえていらっしゃいました。ご参考まで・・・>Sony Dealer Convention2007+マーケッターインタビュー

質疑応答で自分がたずねたのは、先述のUSB端子の件以外に、Home HDを含む複数台のロケフリが混在した場合は問題ないのかということと、AVマウスのワイヤレス化は検討していないのかということ。前者はそれぞれのベースステーションが干渉しないようにワイヤレスチャンネルを設定してあげればまず問題ないでしょうとのことで、後者は技術的に不可能ではないので今後の検討課題としたいとのことでした。

このほかにも色々と突っ込んだ質問をすれば良かったんですが、撤収作業や次のセミナーの準備もあるのでやめました。個人的には、日本独自の大人の事情を鑑みつつも、ロケフリの世界に見事にハイビジョンを持ち込んだソニーの技術陣に拍手を送りたい。そんな気持ちになったロケフリセミナーでした。

次回はヘッドホンセミナー編の前編として、「パーソナルフィールドスピーカー」についてレポートしたいと思います。

PSPは進化するハードウェア

軽い!薄い!「新型PSP」――開発者が明かす”設計の秘密”とワンセグ対応(後編)

デジタルARENAに新型PSPの開発者インタビューが掲載されており、うすかるーいPSP誕生の背景が確認できます。以下にそのポイントを箇条書き。

【企画・デザイン意図】
・新技術を投入して、小型軽量化させて、付加価値をつけていく、という業界としての自然な流れとともに、携帯機としてユーザーに”常に持ち歩いてほしい”ということが最重要課題と考えた
・(デザインに大きな変化がない点について、)このフォルムにワイド液晶という形状こそがPSPというのが、既に世の中で認知されているということが最大の理由

基本的には現行タイプの流れを汲み、そこから進化した後継機というイメージで考えていただくといいとのこと。また、常にカバンに入るサイズになったことで、様々な利用シーンで楽しめるとしています。

【設計関連】
・(カラバリなどの)将来的な展開を考えて、塗装しやすい構造を採用
・持ち歩いてほしいという点を重視したことで、ある程度割り切りが必要な点はたくさんあった
・(小型軽量化ができたのは)技術革新によってパーツをひとつずつ小さく設計できたことが大きい

【ワンセグ関連】
・対応はお客様からのご要望が圧倒的に多かったことが最大の理由
・録画機能についてはPSPのパフォーマンスを踏まえたうえで前向きに検討したい

今後については、「PSPは進化するハードウェア」であり「新型もその一環」であるとして、技術が進化している入力デバイスやセンサー系を周辺機器として取り込み、新しい楽しみを提供したいとか。

新型の先にある新型を今から期待するのは速すぎますかね・・・。それはそうと、もう数日後には自分の手元に届くのか。その軽さと薄さを体感出来る日ももうすぐ。届いたら速攻でCCFF7をプレイ!といきたいところだけど、宿題が多くてダメかなあ・・・。

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MDR-EX700SLの遮音性能は・・・

ソニーの最高級インナーイヤフォンの実力は? 16mmユニット搭載EXモニター。ソニー「MDR-EX700SL」

AV Watchの新製品レビューにソニーの最高級インナーイヤフォン「MDR-EX700SLicon」が登場。EX90SLの上位モデルとして10/20に36,750円で発売されるこの高級ヘッドホンをAV Watchがどう評価するのかに注目。細かい評価についではレビューをお読みいただくとして、やはり注目したいのはEX90SLでなにかと指摘の多かった遮音性能がどうかという点。これについて、レビューでは

音漏れについては、カナル型(耳栓型)と考えると多めだが、それでもMDR-EX90SL程は多くない。電車内であれば、さほど周囲を気にすることなくボリュームは上げられそうだ。もっとも、遮音性能がMDR-EX90SLよりかなり高いので、電車や地下鉄、飛行機などでの利用時にはEX90SLよりかなり快適に利用できるだろう

と解説してくれています。ということで、出先でも積極的に使えそうです。とはいえ、価格が価格ですから、断線などの不慮の事故には注意したいですね。

iconicon余談ですが、自分は12日のSony Dealer Convention 2007でこのヘッドホンに関するセミナーを受講してきました。講師はヘッドホン作るおじさんとしてNHKの番組にまで登場した五代目耳型職人、松尾さん。初体面の感動もそこそこに、質疑応答で遮音性能について質問したのは自分ですが、その時の模様については改めて後日レポートしたいと思いますので、もう少しお待ちくださいませ。

ちなみに、遮音性能についてはAV Watchの評価どおりと思っていただいてよろしいかと。(このヘッドホン、絶対買いますよ~、自分は!)